HP版句集・四季彩
俳号・風来坊健丸としての俳句です。
自分の句
白藤や秋田舞妓の復活す
この恋も潮時来たる花苺
夏近し観光案内所混めり
カメラより目に焼き付ける桜かな
車窓全開菜の花の香の滿つる
クレソンに消せるかこの胸の毒
春愁ふ胸に君だけ光りをり
春日傘昭和を探す旅に出る
春愁や聴きたい曲が見つからない
国境のやうに陽炎立ちにけり
祈るごと磯巾着のしぼみをり
指先に神経集め磯遊び
親猫も未だこの子と呼ばれけり
街頭で礼す新知事朝つばめ
一年生電源入れるタブレット
逆風やアスパラガスはまだ伸びる
君を見て桜を見ればモノクロで
こんなにも桜満開でも独り
友達の輪から外れて花菜漬け
弾のごと空に飛ばされ杉花粉
清明のフラワーロックきびきびと
絵の中へたんぽぽの絮入り込む
たんぽぽや鉄道マニア集ふ野辺
施設の中心で春愁を叫ぶ
土はひんやり物種は熱っぽい
鳥啼くほど椿開きけり
霾や浜に砂かけ婆の気
星一つ爆ぜて黄沙となりにけり
初蝶の離れるまでは動くまい
つくづくし何言われてもヘヘラヘラ
北開く男所帯に鳥の声
虫出しの雷にざわつく小鬼ども
一言に込める怒りや春の雷
頭痛薬飲むや龍天に登る日の
窮屈を逃れストローからたまや
田楽の火の手のごとく次々と
ニューロンのごとく繋がるしゃぼん玉
光風通す逆風満つる部屋に
淡雪の一生見るやただじっと
春愁は君の居ぬ日の暇つぶし
姦しきほど三本の風車
作り笑いが下手で喇叭水仙
若草を瞬足の靴容赦なく
棒鱈やなんか干されている私
光風に手を伸ばしてる赤子かな
かばん屋の書き入れ時を木の芽風
荒東風や黙を破るにまだ早し
吾を嫌ふ人を観察してる春
じゃれ合うは東風と洋上風車かな
春泥やわんぱくな子の車椅子
猫柳凸凹してるけふの空
野を焼くやえんらえんらの微笑みて
新婚の朝餉に熱き浅蜊汁
魚氷に上る指揮官は半魚人
魚氷に上るヒスチジン削ぎ落とし
愚痴言わず嫉妬もせずに夜の梅
春疾風スリル楽しむ風見鶏
愛の日や君のうなじが吾を睨む
鳥の恋空一面を使い切る
美(は)し君の声に雲雀も嫉妬せり
しょっぱい春月すっぱい片思い
春愁や吾は神様を許さない
鶏舎まで長き道のり春遅し
囀の訳は大人になつてから
囀や父呼ぶ母の声若し
朝東風やコーヒーの香の流れ来て
しがらみを解き春セーターを纏ふ
春光に放たれ放つ君といて
天と地の返るその日の薄氷
光ごとつまむ一片の薄氷
春寒に恋の魔法も解けました
春寒や分かり合えない人といて
春暁に男鹿を出る船戻る船
きつぱりと収む二月の暦かな
冷酷な魔王の庭にシクラメン
祖母の命日シクラメンの咲く頃
立春をギター一本弾き語り
幸せを分くやうに福豆を分く
鬱の字をバラバラにして春隣
春隣り箪笥の奥の服を選る
次のバス来るまで長し探梅行
山神に呼ばれるままに探梅行
白鳥来る田沢湖は完全体
白鳥を撮るためだけのカメラかな
口笛のうまく吹けぬ子笹鳴けり
新海苔のちぎれる音の心地良く
寒紅を差してるうちは泣きません
徳利のやうな花瓶に冬椿
冬椿カーブミラーに君の背
物書きの恋多きこと寒卵
久々の陽光食みて寒雀
詠んで捨て詠んでは捨てて寒稽古
日脚伸ぶ久々に見る我の影
雪うさぎ福太郎より低く座す
この水は雪莵溶けきった水
寒椿君は良き香を置いて行く
蔵の戸の吹き飛び火事の廻りけり
寝酒吞む父は孤独に包まれて
狐火の出でて姥ヶ火つるべ火も
狐火の二つに分かれまた戻り
吾の型を取るやうに寝る霜夜かな
蠟梅の枝にリボンを結ぶごと
特攻のドキュメント観る成人の日
乗車してやっと開かん初鏡
町々の色を奪いし吹雪かな
戸を開けてまずは寒波とぶつかりぬ
おみやげは妻にカステラ子にぽぺん
蕪洗ふ夫は赤子を湯に入れる
簡単に噓つく人と寒蜆
一滴のしずく重たき氷柱かな
もし君が雪女でもかまわない
人日の気持ち通わぬLINEかな
若人の七草粥をおかずとす
堂々と寝坊してをる寒の入
サイコロの多角形なり絵双六
カナ書きの名前入りなる春着かな
個室の灯増えて施設の三日の夜
富士より嬉しまた君と逢ふ初夢
並べたる干支の置きもの去年今年
様々を名残の空に許しけり
数へ日や幸逃げぬよう指を折る
そこに灯があるかのごとく飾売り
餅搗きの一拍ずれて声が飛ぶ
兎にも時に吠えたき夜もあり
白昼の駐車場に熊の糞
聖樹の灯歌ふかのごと点滅す
フルートの音色に目覚むクリスマス
一斉にサンタクロース空へ発つ
AIに訊く煤逃げの言い訳
中継の街まだ暗しけふ冬至
着ぶくれと着ぶくれ道の譲り合い
生存を知らせる灯り冬籠
一切を忘れて独り日向ぼこ
霜柱踏んで柳田格之進
湯豆腐を初心に帰りたき夜に
ラニーニャはいたずらっ子や空っ風
梟や森は魑魅魍魎の宴
あの人は狐だったと言い聞かす
人の世を遠目に見てる狐かな
葛湯吹く湯のみの底の雲めいて
白息の「おはよう」という形して
大雪や男鹿の漁師の苦い顔
じわじわと足の指より上る風邪
嫌われて楽な気もあり雪催ひ
熱燗やけふも不器用に生きて
葱好きを隠しきれないトッピング
もてなしにまずストーブのある部屋を
ヒーターの点火の音の逞しく
寒そうなほどに真白きうなじかな
極月や背にいそがし憑いてをり
美(は)し声の君ことのほか息白し
冷めそうな想いとホットドリンクス
呼び鈴は室の花ある二号室
納豆の糸を引きつつ説教す
結びたき契りありけり姫椿
山茶花や悪縁なんて言わないで
恵比寿様ついに鯨を釣り上げる
就労支援所の沢庵漬く課題
新婚のポリリバリリと噛む沢庵
冬の日の同じ屋にいて逢えぬ人
パチパチと火花のごとく花八手
下を向き歩く癖あり花八手
老犬にかすかに見える石蕗の花
君の香を体に落とす冬の朝
足元に銀杏落葉を遊ばせる
小雪や黄金色なる今朝の雲
ストロボに雪虫どもの騒きだす
綿虫や仏間に朝の光入れ
なんか気になる焼き芋屋の生い立ち
冬の日に君の優しさ思い知る
冬の日やチェコの古城の雲を刺す
あやとりに夢中になる子冬浅し
初めての脇役の兄七五三
綿虫と悋気の虫を踏み潰す
浮鳥やちょこまかしてる日本人
今川焼喰ふて寄席のトリいよよ
この先は迷いの森と言ふ梟
停電の街を青々と天狼
具の一つ一つが主役おでん鍋
オリオンや愛する人は蠍座で
冬暖は君がいるからてふ誤解
艶やかな音立て牡丹焚火かな
どの顔も商人に見え酉の市
山茶花や心の広き他人妻
冬来るキャラメルラテの封切れば
待ち人の居らぬ案山子と来ぬ我と
茨の実老いた星にも似たる赤
光にも表裏ありけり黄落期
黄落や紙袋より都会の香
文化の日いずれ古典になる噺
鳥渡る手紙を書きぬペンのごと
町中をキラキラさせて露の玉
ドラキュラの日本上陸聖徒祭
万聖節マリアに似たる君の声
ハロウィンのまち国芳の絵のごとく
独り身で下戸で無精者の夜寒
冬支度老いたる父の底力
待つことは嫌いじゃないし木樵虫
小さき噓詰め込みました烏瓜
秋うらら出羽三山の四方話
龍田姫は寝坊街は温暖化
霜降のつるんと剝けるゆで卵
秋の星瞬きにさえキュンとして
空高し何もしないと決めた日の
ブラバンは街の警官秋高し
茶色とはこんなにきれい栗の艶
叶うなら長夜の君を見てみたし
ライブ終え夜長に放り出されけり
胡桃の実ぐりとぐらならあの森に
亡き友のLINE煌々残る虫
流星にされても良いよ君になら
無花果を食ひつ昭和を語る父
カナリアの忘れし唄を秋の夜に
転々と施設を替へて穴惑ひ
レモン汁一滴大人への一歩
片恋やレモンのほうがまだ甘し
母強し秋の蜂には怯まない
放置柿ジャムにして売るキッチンカー
太陽の子供のやうな柿たわわ
君は三連休秋夕焼わびし
どんぐりと山から下りる土転び
傾ける家を団栗転がりぬ
落花生部屋の隅より現るる
落花生剝いてる時だけ静か
耳元で落花生を鳴らす癖
肌寒し左手薬指淋し
この山の主の顔している茸
多様性低き日本に色鳥来
5ワットの光放てり新豆腐
皮ごとに林檎齧るや子年の子
寒露の日コーヒー缶に垂る雫
秋祭り賑わいに聴く君の声
秋祭りキッズダンスの風を斬る
献血に始まるデート愛の羽根
好きな子の親友嫌ひ初紅葉
ハイウェイを下りれば香る金木犀
爽やかな朝・風・光・そして君
秋霖やほんとは怖い唱歌あり
個と個と個秋の夜の障がい者施設
吾を嫌ふ人に幸あれ秋の虹
星走るたびにカーラジオにノイズ
ローディーは次なる街へ流れ星
秋の雲ガチャで障がい者に生まる
秋空を庭に広げて君を待つ
秋風に五感を洗ふ散歩かな
蜻蛉の前を獣めく車椅子
気にしつつ知らんぷりする菊日和
一匹と二人の暮らし律の風
時として理性は邪魔で吾亦紅
諦めるチャンス逃して秋桜
お互いの色をぶつけ合ふ鶏頭
帰さない無月の道は暗いから
飼い犬の庭で無月を嘆きけり
望月へ飛び立つエクスプレスかな
石榴割る嫌いな人が増えた日の
螳螂と赤子と犬の三すくみ
色なき風にゴシップの浮き立ちぬ
君のバカ君の大バカ秋刀魚焼く
重症の秋愁全治一ヶ月
私は危険人物秋の雲
居眠りす机の角に栗置いて
水澄みてマラソン走者映しけり
街角を急カーブして野分かな
鳥海山くっきり見えて秋の水
白露の日君は小さく髪結ぶ
悪気なき眼をしてをりぬ稲雀
気が付けば一途な恋に鳳仙花
鳳仙花無粋なる世に種飛ばす
糸瓜や父の大きな背を流す
少年よ大志抱けと言ふ案山子
休日を飲み込むごとく秋出水
疑われなき秋の蚊のキスマーク
露草や会いたい時に会える仲
片恋も倦怠期あり秋の空
朝顔を観るや千代女に挑むべく
嫌われた気がするそんな秋愁ひ
桃を剥く母はなぜか上機嫌
桃食ぶる怒ってないと言ふ君と
蜩や少女ロックに目覚めたる
三ヶ月天気予報に嘆く処暑
染めきれぬ君の髪愛づ秋涼し
月は信じる神様は信じない
新しき内履き多き休暇明け
そわそわと爽やかな朝に君を待つ
TUBE聴き納め残暑の土曜日に
人妻と思い知らされて秋夜かな
盆踊りと言うにマイムマイムかよ
町の名を冠する唄や盆踊り
蟋蟀と叶わぬ恋に泣いている
酔うている祖父の相手す敗戦忌
山の日の鳥海澄みて秋澄みて
街の灯の海のごとくに天の川
恋に効く待ち受け画像星祝い
蜻蛉来て女児の頭のリボンへと
吾の膝に留まる蜻蛉とにらめっこ
夜はこれからとばかりに出す西瓜
八月のぐぐぐと鬼門開く音
八月に問はれる平和問ふ平和
白桔梗母は静かに愚痴を聞く
告白を先延ばしして赤のまま
赤のまま茶店となった廃電車
片恋は二年目に入る秋に入る
海月の子宇宙漂ふ夢を見た
少子化に町営プール物寂し
口癖は君の名烏瓜の花
烏瓜の花咲き枕返し来
夏の蝶般若の入れ墨に留まる
神経を狂わすほどのかき氷
かき氷傷みし胸をさらに衝く
追い風に流し索麵の颯爽
無防備にイヤホン外し端居かな
白服を透かし見らるる肺二つ
峰雲や最強開運日を君と
競泳で名を挙げたるは床屋の子
夕虹や君は今頃母の顔
風を待つ間も花火見の醍醐味ぞ
容赦なく空を殴りし大花火
夏風斬って車椅子バスケット
香水にアナドレリンが止まらない
土用入り二黒土星は幸運期
日盛りや鳴き声の無き動物園
本島は丹波太郎の掌の中に
水嫌ふ子供ら増えて大暑の日
儀式めく恋の願掛け夏の月
泡盛の肴に旅の話など
涼しきは君の瞳と声と香と
一眼国めくひまわり畑かな
無数なる向日葵見上ぐ土となる
万緑やサツキとメイが暮らす家
万緑のけふは機嫌が良き日かな
早死にの友達多し蝉の殻
鞄から英和辞典と空蝉と
トマト転がる埋めた胞衣(えな)壺の上
砂日傘閉じて潮騒寂し気に
地平線めける扇子の一文字
吾を跨いで行くあっぱっぱの君
志ん生のなめくじ長屋風死せり
エアコンは痛い扇風機はぬるい
トリは船徳六千日さまの日の
初蝉に応えるやうに泣く赤子
蟻の聴くブラックホールの轟音
兄弟の末っ子ばかり蛇に寄る
真新し火伏の札や夏祓
睡蓮に見上げられ見下ろしてゐる
睡蓮や間もなく友の一周忌
朝焼や君がいるだけでの至福
美術部の腕を鳴らして箒草
小暑などとうに忘れている地球
濃淡の過ぎぬ青選る朝顔市
香水が君を美しくしている
君を守れるなら蚊火にでもなるか
白銀の龍の髭めく心太
ところてん辛いことから忘れ行く
故郷にバナナボートてふ名菓あり
バナナ喰ふ検索履歴には離婚
半夏生能登を出る人残る人
ガラス器と共鳴してる氷菓かな
ブログには書けぬこと多々水中花
結婚のできぬ人生黴拭ふ
不純なる愛をまっすぐ立葵
花葵お江戸のほうを向いてをり
夏草に不自由な脚ぶん投げる
梅雨空の対義語めける君の声
梅雨空や合わぬギターのチューニング
歳時記に知りたるむごさ沖縄忌
餡蜜がフードファイター追い込みて
花梯梧ひょいと顔出すキジムナー
夏至の日も君が一番好きでした
堂々と夏至の名古屋の御免札
追伸のごとく添えたるパセリかな
この夜を働く人の背に汗
辻占に待ち人来る落し文
昇るより泡は知らないソーダ水
束の間の一時帰宅やソーダ水
魚断ちの舌は忘れぬ鮎の苦味
釣りたての焼きたての鮎陽は真上
風鈴や今は独りを楽しめり
透き通る風鈴の音と君の声
汗の香も君のものならなほ愛し
定位置に帰る玩具や明易し
この町の水にも慣れて冷奴
冷奴食ふや人生折り返す
冷奴上戸と下戸を結びをる
心地良きビールの喉を過ぎる音
古寺の払子のごとく合歓の花
逢いたさをこらえて時の記念日に
時の日や江戸の売り声響く寄席
空き缶の奇麗に朽ちて植田かな
相棒はフィルムカメラや四十雀
悲しみにピリオド打つてさくらんぼ
桜桃の形は幸せの形
手放してなおも光りし植田かな
紫陽花やショートヘアの君が好き
枇杷食ぶる距離を詰めてきたのは君
ルービックキューブ解いて枇杷を剥く
残酷な事件現場に蛍舞ふ
この恋は叶えてならぬ草蛍
けふ芒種餡とバターのハーモニー
傘化けの空中散歩けふ芒種
捨てられて傘化けとなる芒種の日
緋目高と子らの分け合ふパンの耳
地球は自転す目高は回遊す
花みかん三波春夫の声朗ら
どこを切っても万緑の島だった
蜥蜴迷走ダンジョンめける倉庫
前世はくノ一でした青蜥蜴
荒波のブルーシートを天道虫
両親の馴初め聴くや天道虫
初鰹茶断ち酒断ち女断ち
棟梁の弟子に振る舞ふ初鰹
でで虫の伸縮ヨーヨーの大技
蜘蛛の囲やゲゲゲの森へ抜ける径
南風やギター背負って上京す
関取の癖毛の強し迎へ梅雨
生きがいは君に会うことけふ小満
スマホから解放されて麦の秋
穴子とてうの字に海を漂いぬ
江戸っ子の擬音の多き三社祭
紅薔薇や抱きたくなるも愛ゆえに
ハイウェイを下りて青葉木兎の里へ
白薔薇が君の眩しさに負けた
偏頭痛軽し雨蛙騒がし
嫌われる理由浮かばず筍梅雨
粘土遊びが好きな子や筍梅雨
草笛の知るギターには出せぬ音
父母の今日も仲良く初夏の庭
故郷は街より深き緑さす
新緑やキックボードが風を切る
明易やリビングの旅終えし犬
明易や君が微笑み覚める夢
ジャスミンや君の透明感が好き
茉莉花や二百種ありぬ白の色
甲冑の子と並びし武者人形
鯉のぼり風をばくばく喰らいけり
柿若葉グーチョキパーの揺れる影
姪っ子はよく眠れる子柿若葉
その顔は苺ミルク喰う顔じゃない
垂直な生徒の挙手や薄暑の日
許されぬ恋する吾にも夏来る
風炎や八岐大蛇目を覚ます
トリは新真打ちぞ八十八夜
聖域に入るかのごと青き踏む
芝ざくら君の心を見てみたし
芝桜の無限回路に立ち尽くす
歳時記の年季の増して春尽きぬ
行く春を通り越してく子らの声
紅つつじ登校班を廃止とす
風船の割れて飛び散る愚痴あまた
片恋やゴールデンウィークの愁ひ
菜の花を嫌いな奴と見てをりぬ
君になら百夜通わん小町の忌
東京へ発つ子に持たす春日傘
君にまた許されてをり花一華
アネモネにこぼす叶わぬ恋の涙
ネモフィラの水辺のごとく春の庭
君と主の幸願いつつ花水木
匙の上輪切りのアスパラガス遊ぶ
陽を放つ輪切りのアスパラガスどれも
春潮や友を見舞ひし帰り道
片恋に一喜一憂花曇り
吾を挟む春夕焼と君の声
クレソンや朝の光が君に溶け
クレソンやいよよ始まる反抗期
愛ほどの温度のありぬ穀雨かな
穀雨の日土を嚙んでる母の爪
不死鳥になれぬ雲雀の美声かな
うらやまし蜂にも愛を注ぐ人
東屋は蜂の一味が占拠した
桜蕊降る母起こす時間過ぐ
うららかに叶わぬ恋が捻れてく
人混みの話ばかりや花疲れ
四つ葉のクローバーちょっと変わり者
日本は長寿大国残る花
春愉し叶わぬ恋を満喫す
野遊びはいつも真剣勝負かな
山笑ふ何が起きてもケセラセラ
吊り橋の上のドラマに山笑ふ
チューリップ好き避け悔いる目に痛し
喜びを吐き出しているチューリップ
哀しみを吸い込んでいるチューリップ
十字になり十字をきぬ燕かな
愛欲の欲の字春にくれてやる
雨にさえ陰陽ありて菜種梅雨
坂多き街を歩くや桜餅
江戸っ子は強情が売り啄木忌
花菜漬この後悔の潔さ
𠮟られることもなくなり花菜漬
杉花粉初めて見たる君の涙
清明や恋は愛へと転生す
清明の土真新し靴で踏む
霾や前座はたらちねを演ず
薇の渦より雨後の光かな
窓辺には音符のごとく干す薇
解読の難しきメモ目借り時
仲春や歳時記に無きこの悪寒
初ざくら裁判所には長い列
干拓の村に集いし春の鳥
新作のスイーツ旨し芽立ち時
陽炎を吸い込む龍と吐く龍と
どこまでが陽炎どこからが異界
春愁をぶっ放すごと叫ぶ人
駅前で恋とぶつかる春休み
母と娘はまるで友達春休み
幻聴に応える祖母や春霞
吾は叔父になる庭にぎにぎと芽吹く
語り継がん令和六年春場所を
春塵や父の詳細すぎるメモ
たんぽぽの絮吹き鳩にする手品
たんぽぽの絮放つ弾として放つ
この愛に名をつけるならやはり春
光風の粒子一つ摘まみけり
光風の中祖母となる母といる
初音百両君の声千両
初音聞く生きてるだけで丸儲け
春分の日君のほくろを見つめをり
春分と言うには淋しすぎる空
靡きをる奉納幟田螺鳴く
炭焼きの鼻歌愉し山笑ふ
米朝の地獄八景聴く彼岸
春の昼検索バーに愛と打つ
君の声弾む春の朝とはこんな
つくづくし後指など痛くない
この空を突き上げてみよつくしんぼ
三月を恐る恐ると過ごしをり
じいちゃんのハーモニカの音跳ね春意
北真開く港は銀に光る
蜷の道ナチスの地上の絵のごとく
クロッカス恋の続投決めた朝
春の夜に別れ話を告げに行く
東京に空はあるのか石鹼玉
嫌わば嫌え君の春愁になろう
復興の珠洲を走りし春の水
雪雫ペンギン村に朝が来た
雪しずく涙を流すマリア像
竜天に登る鳥山明逝く
一心に廻る風車を選る
我はまだ純愛モード獣交る
あの山は故郷の山雪の果
愛に似て愛でなきもの春の雨
苛立ちも憂鬱もなく春の雨
啓蟄やチラシの裏の宝地図
よろよろと朧の中を行く手の目
雛の日や少女の頃の君を馳せ
鉄道の旅のお供に吊し雛
三月の勤務表には別れの香
卒業や先生ずっと好きでした
黙禱に卒業式の始まりぬ
大谷は結婚姉はレタス嚙む
水はじくレタス乙女の手のごとく
二月尽これがカエル化現象か
春暁の空へ悪夢を放り投ぐ
居座りぬ貧乏神と暮らす春
悔やめ悔やめ主ある人を愛す春
東京のもろさ露わに春北風
できるなら春の夢へと攫いたい
春星やこの片恋を探してた
花ミモザけふは国際女性デー
花ミモザ二十歳の恋の破れけり
君の居ぬ部屋はモノクロ春の朝
占えば吉夢と出たる春の夢
囀や口にはできぬILOVEYOU
春灯の揺れ吹消婆の気配
バラバラのポンデドーナツ春愁ひ
花すみれ祖母はゆかしき人でした
君に会えない春愁の三連休
飼い犬の鼻がヒクヒク春の土
トクトクと脈打つ地球春の土
授業では教わらぬこと恋雀
ひとり寝を笑ふかのごと猫の恋
弱点は大好きな人猫の恋
まだ心開けぬ奴と蜆汁
春一番株までポンと跳ね上がり
春ショール故郷は水と寺の町
吾は健全男子バレンタインの日
片恋に乾杯バレンタインの日
会わぬのも気遣ひバレンタインの日
薄氷に風の足跡めきぬ紋
野心家の食らいつきたる菠薐草
若人の血潮のごとく菠薐草
母の縫ふもの身に着けて針供養
蕾みな身を縮めをり春北風
春の夜に神への愚痴が止まらない
春寒を鎧の如く身に纏う
味噌汁を残る寒さが旨くする
春雪は礫のごとき痛きもの
日本の急所突きたる春の雪
歳時記のピンクの映えて如月来
謝肉祭若者の胃の宇宙めく
亡友に会いたくなる日余寒あり
立春や詩集に編める恋心
鬼役も福々しくて追儺の夜
日脚伸ぶマンホールには炭治郎
逢えぬ日は三寒逢える日は四温
引鴨やどこか悲しく鳴る汽笛
凍星よ結婚制度無くしてよ
春近しコロナ禍を経て開く扉
この家は幸せらしい雪達磨
冬深し愛する人は主といる
寝坊魔の本領発揮冬深し
鯨鳴く海の底よりセレナーデ
しづり雪解けて流れるまでが恋
金運も上がりそうなる寒卵
重力をうまく使って寒卵
悴んで麻痺強くなる右手かな
君の名をつぶやくたびに息白し
大寒もまずは朝日に手を合わす
寄り添ふて離れて添ふて寒雀
蝋梅の香甘し君の香なほ甘し
諦めることを諦め冬の虹
寒見舞い届き文通再開す
寒紅のうっすら残るマグカップ
寒造り酔うて歌うは県民歌
寒造り上戸の人を愛す下戸
定型の会話切なく冬の朝
寒声の長き廊下に響きけり
八つぁんの声も震えて寒稽古
風花の絵から抜け出す龍のごと
寒晴れや夜勤の君を待つばかり
騒々しい世を寒梅の静観
母の手を切り裂いて行く寒の水
また君は吾を惹きつけて冬菫
乗初めやベビーシートを買ひに行く
父は初仕事へ母は初休暇
双六の五回連続ピンと出て
上戸下戸二日の夜の茶漬けかな
刺身かっ食らふ魚断ちの初夢
去年今年母はようやく湯に入る
初明りこんなに狭い部屋にまで
第九より芝浜聴きぬ大晦日
施設とは仮の宿なり年暮るる
男手は父だけとなり年の市
若者に見かね長老餅搗きぬ
数へ日やのっぺらぼうな掲示板
狼のまだいそうなる獣道
数へ日に捨つるものの一つに恋
数へ日に来てバタバタと負のドミノ
狐火の三度回って空へ消ゆ
冬の日に二十代の吾手を振りて
デパートは聖樹の森と化してをり
冬至より恋の歯車狂いだす
食卓の運廻しめく冬至かな
禁断の恋諦めて姫椿
それぞれの今年の漢字年の内
この聖夜俺に預けてくれないか
おうおうとイエティの叫び冬の川
梟の闇を見つめる千里眼
牛若の現れるごと虎落笛
冬凪にこの胸騒ぎ捨てに来た
目の前のポインセチアに喰われそう
葱愛でる舌を親より授かりて
葱添えるまでは未完の料理かな
大雪の夜席夢金たっぷり
世をすべて見てきた顔の浮寝鳥
浮寝鳥眠らぬ街の灯の遠く
冬帽子すこし小さく空せまく
縄跳びの風を切る音ビュンビュンと
おでんぐつぐつ草食男子ぐずぐず
茶の花や眩しすぎたる都会の灯
人形の踊り疲れている師走
ジグソーパズル遅々と進まぬ師走
六の花過去最高の片想い
報酬は今川焼で成立す
「逢いたい」は禁句にします冬薔薇
冬木の芽叔父となる日の迫り来て
雪催い幸せのタロット引く手
女子会をホットドリンクスで締める
介護する寮母の指に蜜柑の香
魔球投ぐその手に今日は蜜柑あり
帰り花四十代の恋楽し
小雪やキャラメルラテは今が旬
じいちゃんは丸いかたまり日向ぼこ
ブロッコリここもかつては森だった
朝霜の降りたる頃に背が伸ぶ子
山眠る時空わずかに歪ませて
小さき体に鎧めくアノラック
アノラック着て声震うリポーター
綿虫を鼻の頭で転がして
焼きたてのパンを抱えて北風の中
母の手と同じ香のする味噌搗く手
冬の月腹わた煮えるほどの愛
生粋の江戸っ子わずか酉の市
なぞなぞを出しつ出されつ落葉踏む
セーターに住み着くケセランパセラン
魚断ちは納豆買ふも手間となる
片恋と硬貨ポッケに冬に入る
神主も右往左往と冬支度
皇帝ダリアこの空は誰のもの
謎キャラの体となりぬ木の実かな
先生は黒子となりて文化の日
追悼の秋止符聴きぬ黄落期
古酒や理想夫婦は父と母
ハロウィンに君も拐えぬ悪になる
ハロウィンにゾンビと魔女の待ち合わせ
誰よりも肝の据わった南瓜かな
秋の夜に今日の片恋反省会
君の香の消えて窓には後の月
夜寒さを座敷わらしの駆け回る
障子貼る無口の父に学びつつ
獣害に柿の不作を嘆きけり
霜降や半年ぶりの頭痛薬
霜降に並ぶ訳あり野菜かな
新豆腐子犬が水を飛ばしをり
こちらから仕掛ける恋や芋煮会
芋煮会ここでも母は肝っ玉
うそ寒が指にしつこく絡みつく
君と会えない日の秋晴れが憎い
零余子ころころ祖母の手は焦げ茶色
秋愁ひ楽しき夜はすぐ明けて
銀杏阻む車椅子の前輪
木犀の香にぞろぞろと車椅子
運動会ピアノの音も子も跳ねて
幸せな片恋の味レモン食ぶ
妖精の孵化す風船葛かな
冷まじき祖父の形見の碁石かな
君の手の紫に染む秋時雨
故郷を問へば目黒と云ふ秋刀魚
林檎の木揺らす寺山修司のごと
舌に全集中新酒鑑評会
兼題は秋刀魚けふも魚断ちの吾
令和の秋刀魚金持ちの口にいま
火恋しと浮き出る父のあばら骨
小鳥来る戦疲れの兵のそば
薄紅葉アニソンフェスは中止なり
薄紅葉60点の初デート
後の更衣閉店セール未だ
満月に問ふジュリエットのごと問ふ
秋雨に河童の皿も潤いぬ
脈拍の落ち着く胸に赤い羽根
赤い羽根つけた師匠の高座かな
秋の夜にやっと短所を見せた君
魚断ち二年舌にはらこの記憶
穴惑ひ国慶節の大移動
車椅子ポケットに流星落ちた
魂震う十六夜の君きれい
金よりも銀の美し芒原
この良夜あとは隣に君が欲し
草棉に息吹きかける少女かな
満天の昼の星めく石榴の実
もう半分もう半分と濁り酒
白秋に溢れる気持ち勃つ想ひ
秋雲や獣が出たと一報来
毒茸を食べた夜から恋煩ひ
君の名を呼吸するごと夜半の秋
祖父の名で途切れし一字秋彼岸
流星や望めば散ってしまふ恋
ため口で話す二人を碇星
白秋や医者の見立ては恋煩ひ
敬老日太き眉毛は祖父譲り
満月や恋する人に秀句無し
恋愛を今日は休んで菊日和
どんぶりに地獄絵図めく唐辛子
秋茄子の踊る踊る李さんの鍋
溢れ蚊や恋する我の弱々し
哀れ蚊や血流悪しき母の腕
秋場所の余韻弾丸の奥羽線
曼珠沙華主ある人を想ふ罪
リストラの父は黙して菜を間引く
十代のような恋をすこの夜長
コスモスと風が賑わう自宅裏
原発を論ずコスモス畑にて
はららごの好きなところも私にね
威勢良き市場の声にはらこ買ふ
とんぶりや町長選の迫る朝
この家のとんぶりレシピ義母に訊く
山彦に応えるごとく初紅葉
飼い犬の鼻の湿りや白露の日
初めての東京は秋霖の真中
秋蝶や組体操のぐらつきぬ
母はまた足を止めたり葛の花
爽やかな朝をバターが溶けていく
爽涼の中を電動車椅子
秋声に聞き入っている夜の厠
怖いほど海は穏やか震災忌
星屑のごとくすり下ろされる梨
これやこの星めく梨のすり下ろし
藪枯らし嫌われ者を買って出る
秋の暮うるさい奴が黙り込む
コスモスと風が賑わう自宅裏
秋風が牛のゲップを包み込む
七夕の願いのどれも無責任
草ひばり早起きするは父ばかり
クニモンと意気投合す草の花
秋蛍ほんのわずかな恋でした
子に帰り母は鬼灯膨らます
スマホから股旅演歌鉄道草
色なき風に色付く果実かな
噛むたびに爆ぜるが如く桃の汁
踊り子の芙蓉一輪髪に挿す
蝗跳ぬ筋肉質な脚曲げて
思い出を肴にす友の初盆
ホームランアーチのごとくゑのこ草
蜻蛉来て子ら一斉に指立てり
台風の被害犬小屋の半壊
盆来る特攻隊の曲聴きぬ
西瓜種飛ばす君いちいち奇麗
地球は水の星西瓜は水の玉
悔しさを睡眠薬に溶く夜長
空き地にはいつものメンツ泡立草
立秋に日記は二十年目へと
筋肉の過労の嘆き汗となり
ローディーの右往左往す汗の玉
読書感想文結ぶ広島忌
良き旅の証とばかり日焼けして
文通の八巡目は暑中見舞い
先生はムームーで英語の補習
アロハシャツの噺家鞄に着物
父の若返り作戦アロハシャツ
啼きもせず羽抜鶏の黙の不気味
不似合いなパイナップルを食ぶ不良
仏間より漂ふ甘き鳳梨の香
鰻の日母より召集の電話
時間差でまだ上がりけり遠花火
朝涼は三文分の値かな
皮膚科医の警鐘街はみな灼けて
昆虫採集ポケモンGOやりつ
中庭は炎暑旨き煙そらへ
老いた母はさみ兄弟夕端居
後輩を褒めて伸ばすや松葉菊
朝蝉や一番鶏の啼かぬうち
中継のBGMに蝉の声
五百歳野球の熱し草いきれ
霊園の墓から墓へ夏の蝶
昼の新じゃがお泊り保育のカレー
ナースコール七回夜濯二回
友の死を少しずつ飲む熱帯夜
五色のペディキュア日向水の底に
大海を愛撫するごと泳ぐ人
駅一つ孤島となりて梅雨出水
風鈴は警鐘黒雲は迫る
優曇華と気付くまでの黙しばし
高質のアロマを焚きて熱帯夜
炎昼にバテてる姉を跨ぎをり
梅雨明けに子らは鉄砲玉となり
手花火や背中合わせの恋敵
飼い犬の熱よりぬるし日向水
今日もまた素直になれず水中花
噴水の次なる的は二番星
噴水とマンネリしたる日々の中
モノクロの寺町に凌霄の朱色
また君は美しくなる夏休み
海からはアマビエ来たる夏祓
合歓の花誰も知らない醜き吾
授産所にそつと寄り添ふ合歓の花
ネタ出しは牡丹灯篭小暑の夜
障害なんのストローで吸ふビール
初蝉の空の高さにただ鳴けり
かき氷威勢良く搔っ込む大工
ライバルは時に良き友かき氷
黒南風や麻疹は百々目鬼のごとく
アイスコーヒー飲みつ庭師の思案
カレー専門店らっきょの名店
フレーズを探すラッパーらっきょ噛む
インフラの無き夜苦手なトマト食ぶ
噴井より水神の声聞こえをり
つる葵バックミラーを突き抜けて
サングラス外して父は本題へ
訪問のキッチンカーの香に夏ぞ
甥姪も来て裸足の子ら八人
四方より風行き交ひて夏座敷
手作りのキムチは辛し夏至の夕
長袖の放せぬ体憎き夏至
万緑や謎の深まるオーパーツ
この旅の行き先決めず雲の峰
闇の無き街の頭上に五月闇
梅雨茸のみな旨そうな色をして
雨上がりびしょ濡れの梅雨茸きれい
冷蔵庫捨てられ付喪神となる
真夜中の異音怪音冷蔵庫
冷蔵庫ときに伝言板となり
水海月母を訪ねて百海里
桑の実を食べたる子らの手形かな
パセリ添う地球に森を増やすごと
夏空や老犬の眼に白き点
七十の母まだ若し金魚草
ロペん家の店先枇杷の並びをり
まず枇杷に吾の親指を献上す
年頃の鳴嚢フェチの雨蛙
五月雨や未だに雲の切れ間なく
田に蛍ふるさとはまだ水の郷
土の香に鼻つまむ人けふ芒種
風斬りて空さえ斬りて夏燕
ラジオよりTUBE流れて衣替え
でで虫は無声映画の中に生く
紫陽花の手入れみごとに寺の僧
コロナ禍の果てには夕虹があつた
ミサイルに棘を放てよ野茨よ
蜘蛛の囲を覗けば空の碁盤めく
あの光竹の皮脱ぐ林より
竹の皮脱ぐ懸命に赤子泣く
野良猫の化ける夏の夜二十二時
田鏡にむらさき淡き花あやめ
雨の日の君は奇麗だ花あやめ
碁敵の祖父は手強し迎へ梅雨
夏風に子らの体の痕が付く
夏の風故郷の水の芳しき
人の世も蟻の世さえも地獄あり
蟻の知る米一粒の重みかな
白昼の大獲物や蜥蜴出ず
浜昼顔の漂流ごみ数ふ
椀にヘルクレス座めける豆御飯
玉葱刻む先鋒の敵討ち
文明を嘲笑ふごと雷響す
筍梅雨や牛乳をよく飲む子
こめかみを筍流し突き刺しぬ
馬の眼に小満の雨美しく
明易や百鬼夜行の急ぎ足
青嵐ごと牧草を食らふ牛
さくらんぼのくせに高所恐怖症
エアコンのカメラに監視されて夏
祖父の手はごつごつしてか天道虫
洋服の動くドットは天道虫
ゴジラめく岩に砕ける卯月波
平鰤の間髪入れず釣り上げる
山を背に氷菓を売りし老婆居り
母の日に父子家庭の子の金言
筍の生まれた山に体を為す
麦の風べとべとさんの通る径
鍵っ子の髪をふわりと麦の風
苺置く不快指数高き部屋
苺食ぶ君のギャップの悩ましさ
魚断ちのこの身の憎き鰹潮
遺伝なるいごっそ気質青葉潮
町ひとつ抜けて植田の景となり
バス停に濡れ女子いて蝸牛いて
蝸牛にもいるやもしれぬ晴れ男
薫風を吸つて怒りと欲を吐く
車椅子リレーにドラマ風薫る
涼しきやチンパンジーに食らふ水
タイ米の味の懐かし山瀬風
東京に新緑みごと溶け込んで
新緑の風に当たって丸くなる
人に知恵蜘蛛には糸を授く神
こんな夜に蜘蛛捕まえてと通報来
お日様はてっぺん筍飯美味
陽の手を空にかざすや柿若葉
ガンダムの踵あたりに蝸牛
麦秋に聴者と聾者たたずんで
麦秋ヤ地球ハ柔キ星デシタ
口笛に口笛で返す幽霊
良寛のふところ深し真竹の子
昔から恋とトマトは苦手です
嵩高の町の機関誌こどもの日
球児の眼鋭くなりて夏に入る
キャラメルの変わらぬ味に春惜しむ
開かれぬ施設の窓に春惜しむ
憲法記念日に聴く毒めく歌
八十八夜に透けたる母の老ひ
母にケーキ買ふ八十八夜かな
かわらけのするり輪を抜け山笑ふ
義士祭や三波春夫もまた不滅
娑婆からゴールデンウィークの音漏る
独活和は世話人からと膳に添へ
夏近し鉄琴めける水の音
マウントを取りつ羊の毛を刈りて
声弾む支援学校若みどり
色ごとに違ふ歌声フリージア
芝桜君は近くて遠き人
春筍もすこし厨を明るうす
眠る蝶見つつ横切る君見つつ
あの蝶はついさつきまで風だつた
春蚊にも地球温暖化を問はれ
ジェラシーに子雀めがけ小石蹴る
雀の子三粒の米に太鼓腹
田んぼには雨降り小僧来て穀雨
野遊びに汚れた肺を洗ふ父
懐に仔猫丸めて博打打ち
理科室に美人教師と蛙いて
花冷えや今ぶるぶるが横切った
忠義心持っていそうな蚕の眼
公園に群れる躑躅の角ばりて
平和ぼけしている吾の頭上に蜂
黄砂やらミサイルやらが今日の空
美しきもの強くあれよという残花
神風の吹かぬがままに黄砂来る
聴者という言葉を知りぬ春の夕
豆の花空に巨人の城を見る
葱坊主空へ向かって南無阿弥陀
ふるさとの話聞かせて葱坊主
じゃんけんはパーで勝ち抜き花水木
長靴の中に小川や磯遊び
草と木の会話聞こえるイースター
前に兄奥に父母見て入学式
夜のファミレス新社員御一行
折り畳む大きな体新社員
桜蕊降りきるまでを愛でる人
桜蕊降る路上ライブ賑々
車椅子てこの原理で野遊びす
野遊びの勲章めける肘の傷
花冷えの町を小さき探検隊
たこ焼きは熱し花冷えの弘前
目借時体に障る恋をして
教室の机黄ばみて松花粉
杉花粉舞ひぬ住宅展示場
花菜漬け挽回ねらふ棋士の膳
子猫見てしゃがみし母の猫語かな
魚断ちて山葵の味も忘れけり
洋上の発電稼動桜まじ
ゴミ拾ふ婆に目を伏す花曇
儚さを美とする罪や花の雨
ワシントンDC滲む花の雨
蝌蚪遊ぶたらいの中のラビリンス
人の子も蝌蚪も空飛ぶ夢を見ん
清明にスーパーボールよく跳ねて
山々は呼子の声に芽吹きけり
今朝もまた重くなりたる芽吹山
LINEには元気と書いて四月馬鹿
ローディーは西へ燕はこの町に
無職にも締めといふもの三月尽
春苺ぷよぷよめけるパフェグラス
薇の何が目出度くのしの字と
軽やかに新居の窓を春の雲
母の書く子の名の丸み春休み
菜種梅雨テールランプのふわふわと
抜け出せぬ先輩ロスや菜種梅雨
うっかりと霊が佇む雪柳
右に大谷左に球児の彼岸
地球儀を窓際に置くお中日
老いるなら可愛く老いてみたき春
竜天に登りて水の腥き
雛仕舞ひすつとピアノの浮き立ちぬ
ぎしぎしや女子高生の国言葉
ぎしぎしの曇天にさえ映えてをり
俳人のギア一つ上ぐ初桜
早起きの徳の一つに初桜
つくしんぼ強盗団の顔を知る
つくしんぼ兄を抜きたる丈競べ
春埃ボッチャの玉の落ちて舞ふ
鳥雲に入りて地球の突き当り
鳥雲に入る久保田の城の真上
ピチャピチャと鳥雲に入る音かすか
たんぽありムーミン谷の入り口に
夢に見し和歌三神や鼓草
蔵の戸の開けて初蝶迷い込む
大安の茶柱立ちて初蝶来
だいだらぼっち富士に腰かけて春
春塵をドーナツの粉が甘くする
投稿す三月十一日の日記
この初音人の辞書には無き言葉
雉の声今日を始めるゴングとす
牧開き命を返す聖なる舎
牧開きバンジョーの音の軽やかさ
その女足元やけに朧めく
明日の飯食ふほどの田の朧めく
お互いを壊さず触れるしゃぼん玉
はの行の発語訓練しゃぼん玉
石鹸玉連隊きみへぼぼぼぼぼ
春愁の始まりとなる偏頭痛
啓蟄や地底に軍事国家あり
啓蟄の三面記事に虫めがね
凧揚げに耽し世代は我らまで
漁師の子網を引くごと凧を繰る
白熱す親子三代凧合戦
妹は空手初段や春一番
風神の通り過ぐとき春一番
桃の日の寄席の顔付け女流多々
桃の日や紅一点の母強し
雪解けの始めぷるんという震へ
雪解けやオセロの駒の返るごと
卒業子スタートライン探しへと
この空と青を競いて犬ふぐり
春めくや床屋はどこも混んでゐる
春めきて小石までもが活き活きと
今朝もまた中庭に土現るる
豆腐小僧けふは田楽運びけり
魚断ちを解いて獺祭してみたし
貯蔵酒の吸い上げられし雪の果て
海苔籠に人魚のうろこ混じりけり
人魂のごとく彷徨ふ春の蠅
春の蠅めでたき席に現るる
どこからか味噌焼く香り木の芽時
木の芽時老いも若きも悩み多々
恋猫や多頭飼育の地獄絵図
土の香の際立つ朝やけふ雨水
草の芽の持ち合わせてぬ競争心
旅先の恋はミモザに置いて行く
指先に放てそうなる余寒かな
女子会の真中クレソンサラダあり
鳥交む声から今日が始まりぬ
バレンタインデー花束買ふ父よ
子等の声無き公園も暖かし
春暖に故郷の香り思い出し
不器用で頑固な父の蒸す浅蜊
下萌に馳せるは遠きウクライナ
年占の再開祝ふ春の雪
弁当にネーブル詰めし八百屋の子
春灯や荷作り終えし広き部屋
うすらひや地球温暖化に打つ手
立体の折鶴に添ふシクラメン
恋猫にをんなごころを訊いてみる
立春やチーズ溢るるハンバーグ
噺家の声高らかに福は内
なやらひの鬼声一つ張り上げて
見るだけで湯冷めしそうな長き髪
湯冷めせし一番風呂の男かな
一年で買い替える子のスキーウェア
並べ干すスキーウェアに育児の香
ただ一度父に凭れたスキーかな
準夜勤終えて家路の冬北斗
異国めくたろんぺという名の氷柱
兄の背に弟隠るる橇遊び
納豆や祖父の満州での話
湯気立てや鍋の中には龍が住む
日脚伸ぶタイムセールに駆り出され
鮫の眼にプラスチックを食べた悔い
風花や色とりどりのランドセル
パソコンの起動速まる四温かな
白米の待ちきれぬ湯気寒卵
勝ち越しの場所終えささと寒稽古
めでたさの残り香ほのか初場所に
冬菫すべてのものに宿る精
新婚の寝坊を笑ふ凝り鮒
寒鴉さえ大型デパートへ流る
手袋を早く外せと友の酌
戦無き世を願いつつ小豆粥
海鼠(なまこ)いま食わず嫌いの口に入る
葉牡丹と丸みを競う団子髪
寒紅の映える三味線漫談師
松過ぎてジェーソン動く金曜日
寒紅を差して待ちたる間夫の客
魔界へと誘っている樹氷林
寒晴れにカピバラゆるり湯に浸かり
彼の人の末裔が吾と雪女郎
白猫の夢見た今朝の寒卵
授かりし命へ注ぐ寒卵
成人の日電車はさっと華やいで
父子分かつ成人の日の煙草かな
七種の菜に小さきむすびかな
郷近くなるたび厚み増す氷
人日の寄席に珍品掛かりけり
小寒を知らすが如くケトル鳴る
鶏小屋へ後光射すごと寒卵
値上がりに何削りても寒卵
淑気満つ酒樽の座すカウンター
モニターの付箋鮮やか初仕事
ニアミスは酒のせいだと初笑ひ
初笑ひパソコン越しの父母と
東屋に兔の覗く施設かな
クレーンも眩く見ゆる初景色
中継の富士より町の初御空
亥の刻となりて年越蕎麦いよよ
祖母の味出さんと母の小晦日
数へ日の台本めきぬ会話かな
魚断ち哀し中継は暮の市
木菟(みみずく)の眼鋭く森の番
猫八の襲名迫り笹鳴けり
魚断ちの隣の人は鰤食いぬ
狼の降りて飼い犬遠吠えす
雪掻きも球児は夢の糧として
この騒き降誕祭のあつてこそ
和室にも収まりの良き聖樹かな
冬至の日GODIVAのチョコを囓りをり
羊水の幽かな記憶湯たんぽに
子宝願い福々し鯛焼きを
艶っぽく千枚漬の撓(しな)垂るる
地上絵の信号受けし冬銀河
ドローンの破る結界山眠る
母の咳まだ夜の明けぬ厨より
魚断ちぬ人もあろうに鰤起し
初氷さえ美しき水の郷
室咲や胎児に流すクラシック
クリスマス先ずは皿から選びけり
道の駅ポインセチアのタワーめく
パソコンもアップデートや煤払
海の声となる鯨の超音波
コロナにも効くやもしれぬ生姜湯
豚骨のラーメン冷めて虎落笛
青春の真中にいる子冬いちご
味付けは醤油のみなりブロッコリ
五代目の小さんに化けし狸かな
息白し新語を交わす女学生
ストーブの前を譲りて水仕事
猟人の鉄砲置いて絵筆持つ
狐火の王子のほうへ消えて行き
開放のトイレの窓に月冴ゆる
パタパタと家電壊れて大雪来
冬景色眠りし町を早番へ
厚着して机に向かふ十五の子
天狼や読み聞かせしはぐりとぐら
憑かれしか蜜柑食ぶ手の止められぬ
温泉の灯のしばし消え山眠る
冬の日の通る部屋にて自粛せし
縮みしは父の体かセーターか
焼き芋を分け合う仲の深さかな
アノラック仕事モードへチャック上ぐ
母親のセロリ好きだけ遺伝せず
芝浜を卸す勤労感謝の日
小雪や魚はいよよ旨くなり
止めていたコーヒー飲みつ日向ぼこ
いびつなる大根並ぶ町の市
待つことを苦とは思わぬ姫椿
銀杏落葉や東京の香のしたり
北塞ぐ百鬼夜行の帰り行く
北塞ぎ孤島めきたる角の部屋
あの人の面影に似し冬薔薇
駅名のカタカナ多し花八手
よく笑う家の庭の庭にぞ帰り花
成長の跡は母にも七五三
写真屋の犬と遊ぶ子七五三
冬の雨友の訃報に触れし夜
漬物の味見る母や冬浅し
柊の鬼門を向いて開きをり
体より心疲れて花柊
明治期の富豪の庭に冬紅葉
街々を北風追ってキッチンカー
冬曙に欲無き祈り捧ぐ
夜更かしもまた青春と冬の月
祖先めく飼い犬の眼や冬の月
小春日やバリアフリーの進む街
爽快に小春の町を行くjeep
風水の吉方位には室の花
象は明日他園へ行きぬ冬夕焼
初冬や十九の子より鋭気浴ぶ
石蕗(つわふき)に会話をもらう老夫婦
酉の市無銭の客を狩るホスト
アコギよりエレキが似合う冬の月
良き縁を密かに願う神無月
魚断ちも鯛焼きならば許されよ
綿虫に人の恋しい時を知る
木の葉髪アムラーだつた君を馳せ
落葉踏む地雷無き世を願いつつ
山眠る街路樹だけが夜を更かす
人も樹も腹をくくって冬に入る
立冬やケルンも晴れという報せ
立冬や出動式は技師一人
蛇穴に入る飼い犬の仇は減る
晩秋や受け入れ難きことばかり
アイドルの苦悩あらわに色葉散る
色葉散るライトアップは痛きもの
憤る我に紅葉の赫熱し
紅葉や山の雨さえ色付きぬ
吾は団栗を君は吾を転がしぬ
行く秋や帰る部屋さえ闇深き
イケメンの車夫の二の腕文化の日
忘れ得ぬ人語れば釣瓶落し
幸せの色には見えぬ檸檬の黄
片恋の始まりの夜にレモン食ぶ
幇間の松茸飯にありつきぬ
冬隣味噌ラーメンにバター溶く
飼い犬に気付かれ分ける夜食かな
ハロウィンくらいなりたき私になる
魚断ちは秋さえ断てということか
テーブルの花瓶無き朝秋惜しむ
野良猫も時に呼び込む囮かな
「一生」の言葉の重み秋深し
火恋しと母にくっつく子供かな
求むるは自由か友か囮啼く
廃墟のホテル野山の錦の裾
晩秋や好物断ちて命取る
なべっこは季語ではあらず秋麗
値上がりの具材並べて芋煮会
土曜日は秋刀魚焼くから来いと言ふ
プシュプシュと鍛冶屋のごとく秋刀魚焼く
山暮らし茸見分けていっちょ前
冷まじや血の無きものに囲まれて
歳時記とスマホ必須の鯊日和
秋気満つ石に子象の絵を描きて
霜降や映える新車のスカイブルー
山粧ふ役目終えたる観覧車
名曲は二十七音秋の暮
前足をこすり飯乞う秋の蝿
JAL便の紅葉山より故郷発つ
ドライブは佳境秋雲は途切れず
午後三時バックミラーに小さき秋
「水色の恋」の時報も秋の声
お馴染みの時そばさえも秋の声
コスモスに故郷の誰を重ねをり
長き夜をタイムトラベルしてきます
この夜長ベッドは檻と化してをり
赤い羽根朝のラッシュのあちこちに
赤い羽根外して母の顔になる
新キャラは秋明菊をモデルとす
草に寝て神話生まれし星月夜
鶏の声響きし庭に柿たわわ
茶柱の立ちたる朝や鶴来る
鶴来る生まれ変わりを信じる子
譲り受く本に紅葉の栞付き
刈田とてカメラ男子を惹き付けぬ
吉原の灯りぼんやり刈田道
ワクチンを打ちて刈田の故郷へと
チベットの鳥葬無花果コロリン
無花果のミステリアスを含む味
冬支度動けぬ父は司令塔
冬支度終えし体に白子汁
「もう良い」と死神の声夜這星
学校にまだ灯りあり十三夜
朝寒や二日越しなる偏頭痛
どんぐりの七個で通す秘密基地
秋寒に旨くなりをる海の幸
目玉焼きぷるんぷるんと寒露の日
どぶろくや叔父とも会えず二年過ぐ
町の子ら二時間目より稲刈りて
すれ違う炭火職人薬掘る
新米に手を合わせ食ぶ反抗期
新米と今朝の卵の光りをり
母の味目指して南瓜また煮たり
棒手振の肩に南瓜の重さかな
この耳を小鳥に預け食事かな
老犬の飯をついばむ小鳥かな
面会の規制緩和や小鳥来る
食欲の秋には合わぬ吾の体
町に入りまずは案山子に迎へられ
棉吹くや錦に勝る無地の白
青空や陽の透けし風船蔓(かずら)
東京をいまだ見捨てぬ金木犀
我もまた弾けてみたし椿の美
穴惑ひ成仏できぬ霊のごと
東京の地面ひんやり穴惑ひ
太陽の光を粒にして石榴
宝石と石榴を愛でるセレブかな
無患子(むくろじ)の降れる神社や門出の日
秋高し陸奥フリーマーケット
園長の寂しげな顔去る燕
欠席に〇郷のほうへと帰燕
ガサ入れのごと瓜坊の畑荒らし
秋分や地鶏の声のよく響く
煌々と秋分の日のたつこ像
むかご飯父のわんぱくだつた頃
野ざらしの骨に酒と句秋彼岸
秋彼岸檀家を回る外国車
すり傷を風に残して鷹の爪
攻めるとは守ることなり唐辛子
あんたにはわからないわよ秋愁ひ
秋愁ひ拍車をかける月曜日
敬老日化粧会社の慰問あり
秋場所の闘志隠せぬ緋の着物
天高しその先にある異の世界
とんがって斜めに見上ぐ空澄めり
空澄みぬ今日のギターの響き良し
望月へこの身を贄にするがごと
過去を捨て仏の道へ鬼薊
簾外す君の帰らぬままの部屋
簾外す父の耳に届く声
神様の帰りしあとの刈田かな
荷の下りた父の肩に子刈田道
七輪の煙吸い上ぐ鰯雲
校庭の主のごとく大糸瓜
玉章のオパールめきぬ朱色かな
烏瓜誰にでもある夜の顔
多様性ひとに伝えし大花野
吾も父も母に相づち花野道
日本語の美しきかな十六夜
門灯の侘しく見える良夜かな
月今宵再開国を祝いをり
マンホールから水秋空を洗う
名月やベッドに座して日をまたぐ
地球とは人間とはと名月に
電柱はジャンベの音かけらつつき
コンビニの灯りぽつんと芒原
住み慣れた街にまだ見ぬ芒原
秋澄みて全てのものに見る生気
まずはこの上り月から愛でんとす
歯ブラシで弾く絵の具や白露の日
果樹園の甘き実知りぬ秋の蝶
慢心の我に止まらぬ秋の蝶
娑婆へ出て風にひと啼き秋の蝉
秋の蝉六百歳の樹に抱かれ
梨売りや甘き香満つる道の駅
鈴虫や着信音は黒電話
夜の虫おもちゃ箱より声聞きて
秋涼し動ける人をうらやみて
秋手入鋏の音の良き間かな
野羊の毛にも満ち行く秋気かな
野葡萄やこの先魔女の住処あり
ピチピチと風に跳ねるや鰯雲
デスクには東京土産休暇果つ
石叩き今日は地蔵のどこ叩く
秋の昼動物園に命の香
サルビアの今日も空気に映える赤
朝霧を悪夢食らうて帰る獏
この国は狭いと刀豆の嘆き
つくつく法師鍵盤は叩くもの
秋初め頼もしくなる中二の子
初めての東京は雨秋初め
山芋に下戸の男も赤き顔
日の暮れを皆に知らせる法師蝉
朝食の味噌汁旨し処暑来たる
朝顔を観察する子観察す
秋出水町をセピアに塗り潰す
御山洗止みて鳥の声澄みて
秋陰を悠々と行く飛行船
大漁の秋鯵釣りぬ老夫婦
風向きを芒に訊きて一人旅
飼い犬のシャボンと流る草虱
秋茗荷恥じらう君の頬の色
よさこいの鳴子に負けず轡虫
科学的根拠は野暮と星走る
激動の世の中に鬼の子の黙
先達の風は清かに盆路を
フェスの余韻秋の初風に無言
初風や音楽フェスの帰り道
恐怖めくオクラの端の鋭利かな
星落ちてやがて芽吹いてオクラへと
積ん読の山に押されし草の花
夕暮れを待ちて散歩す秋暑し
モノラルの名曲聴きぬ長崎忌
寝転びぬ祖父の背に似し冬瓜かな
新しき恋もないまま秋立ちぬ
昨日より吾の影の濃き原爆忌
原爆忌ノーと言えない日本人
語り部は女子高生や原爆忌
海町の眩し昆布の並ぶ景
プールにて河童の異名授かりぬ
異国めく北東北の夏寒し
百日草細く長く俺らしく
炎昼に医療の悲鳴渦巻きぬ
間の長き友の怪談暑気払
ストローで吸って掬ってかき氷
夏茱萸やスカイツリーも赤く点く
鰻の日うの字めきたる店の列
初恋は理科の先生蝉の殻
何処へと唄を忘れた夏雲雀
帰省の夜飲めなくなった父の酌
遊山船三味に太鼓に船料理
初茄子並んで食べる母と嫁
節電に暗きスタジオ大暑来ぬ
落ちぶれてミンチになれど鰻かな
羅の師匠の噺目に耳に
羅の棋士の動かず一時間
メロン食べ特別な日となりぬ今日
ジャスミンや床に入れば皆ひとり
戻り梅雨飼い犬の目の寂しげに
蜜豆や老舗デパートついに閉ず
初浴衣姉妹にも見ゆ親子かな
朝曇ぽつんと野菜直売所
隣人のヒステリックな声暑し
プレハブの仮設住宅暑の極み
暑き日の飯に真水と塩辛と
青蘆の警察犬にくすぐられ
下町の音の聞こえる金魚玉
釣れぬとも船に飛魚舞い込みて
競輪の抜きつ抜かれつ青田道
伽羅蕗を悲しき酒のつまみとす
伽羅蕗やおすそ分けなる良き文化
ちくしょうと初蝉の声聞こえをり
子らのため一票投ず小暑かな
恋してた日の懐かしき小暑かな
冷房の突き刺す胸の柔き場所
人の手に渡る田を跳ぬ源五郎
一人から二人となりて黴の減る
黴の香すちりとてちんという豆腐
蓮浮葉今日の水面のやや硬し
蚊の声と君のサヨナラ纏い付く
黒南風や異国めきたる今日の空
三平の帽子も舞いて鰹釣り
乾杯の音も優しき江戸切子
君誘い慣れたふりしてボート漕ぐ
菊挿すや鳥海山に黒き雲
花言葉知らずに贈る金魚草
老描を威嚇すやんちゃ子蟷螂
梅雨雲の重く垂れ込み天気痛
ルアーさえ兄のお下がり囮鮎
梅雨茸も雨の恩恵受けてをり
無意味なるものなどないと梅雨茸
いくつかの涙も染みて汗拭ひ
ハンカチや君が泣いてるように見え
山桃を旅の土産に配りをり
楊梅(やまもも)やジンクスなんて信じない
明け番の体に夏至の陽の痛し
水難のニュースは絶えず濁り鮒
名人に短命の相桜桃忌
桑の実の色を残して子らの笑み
ごつごつの教師の手から桑苺
竹植うて嵯峨野の径に雨しとど
賑わい戻りて浜昼顔開く
山国の子供ら夏海をジャック
梅雨入りを知らせるような歯の痛み
花苔やすべて奇跡でできている
とうすみの体に川の色まとふ
早苗田や名水百選の故郷
蛍火の見えなくなつた大人の吾
報道に故郷の名前梅雨出水
鳥の声聞き分けている皐月かな
喧噪な都会の夜に蟇鳴けり
空青く風は穏やか地に百足
蜈蚣追う子らの止まらぬ好奇心
薮医者の庭に十薬群生す
梅雨めくやパーマの君の愚痴聞きぬ
憂鬱は排水溝へシャワー浴ぶ
玄関に並ぶ蜂増え芒種来ぬ
我が畑を金山と化す穂麦かな
一斉に野茨空へ飛びそうな
落し文親心から為せる技
天性の器用不器用落し文
献立に無い泥鰌鍋振る舞われ
騙されたつもりの旨し泥鰌汁
甘藍の陽と風集め結球す
牡丹牡丹愚直なる恋は哀し
行列の最後尾には夏柳
夏山に母校のチャイム昼餉時
豆飯や母叔父叔母の過去を知る
魚断ちの解けて嬉しや初鰹
麻暖簾この先男子お断り
夏雨の農休日ゆえ面会日
夏帽子父のおしゃれは母のため
観客にパナマ帽投げ一曲目
浴室の野太ひ悲鳴毛虫這ふ
一晩で化けた芸竹の皮脱ぐ
箱釣の色とりどりの波紋かな
走り茶に浄化されたる吾の血かな
久方のフェスを演出若葉風
村芝居青大将も見に来たり
小満や今朝のサラダは無農薬
我さえも点景にして夏の海
夏掛の腹に波打つ小さき海
夏掛を小さくなりたる母の背に
竹落葉三年生は引退す
脱走の銭亀飛びて鶴となる
今日もまた山羊と散歩す青野かな
今はただ青野に放り出してくれ
夏の夜の動物園図鑑より奇
明易し戦況語る声低し
夏暁や我が物顔で走る道
群れるのも孤独も苦手著莪の花
風見鶏手玉に取りて大南風
大南風てれすこという珍名魚
スイーツも新茶の色に染まりけり
口笛で返事をしたる愛鳥日
愛鳥日羽の疲れを想像す
夜盗虫ネット社会の恐ろしさ
懐かしき愚痴こぼす祖母根切虫
次の世は菜園作れ根切虫
ハーモニカ吹けば答える燕の子
子燕の十を数えて飛び立ちぬ
太陽と交信中の海芋かな
卯波より海の言ひたきこと探る
ポンポンと魷飛ぶ漁や卯月波
背筋伸ぶ十九の大人雲の峰
賑わった昔懐かし今日夜店
老犬を励ます眼白歌いけり
干拓の村をまばゆく麦嵐
翼竜の化石発見若楓
満天の昼星のごと若楓
甘藍にかぶりつく音響く畑
蝸牛経を聴きたる寺の庭
鮎釣りは解禁魚断ちは解けず
戦火の赫悲し薔薇の赫眩し
香と姿麗し薔薇はまた声も
歳時記を初めて仕舞う立夏かな
引っ越して百日過ぎて立夏来て
まだ少し心開けぬ暮春かな
独活和や食の好みも親に似て
施設では食えぬ独活和郷の朝
二十年越しの恋告ぐ春の夢
叔父叔母に会えないままに落椿
大漁のかどに飛び交う国訛り
祖母の焼く鰊求める我の舌
母に捧ぐゴールデンウィーク初日
故郷は遠くになりて四月尽
昨日より空の青増し弥生尽
小手鞠を愛でて心を丸くして
開かれん春の山へと続く道
雛菊の風を集めて丸くなる
ドライブの主役に躍る花菜衆
宝石の溢る音めく蜆搔き
白藤を前に小さき悩みかな
停戦は叶わぬままにイースター
白藤の雲を思わす垂れ具合
上り鮎えらで感ずる変わる水
競漕や甚五郎作龍の爪
朧夜やラジオはバッファ繰り返す
落とし角大岡様の名裁き
山道に神の産物落とし角
桜東風海沿いの町渡りをり
潮の香の少し混じりて花菜風
まっすぐと菜の花ロード名所なり
春の田を見つつあれこれ育児談
お花見の三月ぶりなる娑婆の景
若蘆や天才棋士は今日も勝つ
お忍びの舟を見送る若蘆葉
値上がりの止まることなく穀雨かな
手に光る苗代水と微生物
小町忌や結婚式がまた延期
小町忌や鳥海山のそびえ立つ
安産を願う神社や田には蝌蚪
つまんでは朝顔蒔く手指訓練
多様性ありきの世界蝮草
新版の歳時記めくる花の冷え
無駄な灯を消せば窓辺に風光る
車椅子ごと光風に抱かれん
海市からぬうっと出でる海坊主
海市より竜宮城に繋がりて
鳥の巣の神棚めいて軒の下
味噌汁のレシピ伝授す抱卵期
昨日より眼優しき抱卵期
エスカレーターのごと桜前線
影踏みにはしゃぐ子供ら春の汗
好きな人三人いるの花苺
囀と思へよ脳に障る声
花過ぎに日本の細長さ知る
山桜競艇場を包囲して
忘れ霜田を見る祖父の苦い顔
花筏おせつ徳三郎演ず
花筏開場前の長い列
核ちらり遠き戦に春愁う
満ち満ちる希望を胸に新社員
猫を追う母の背中に桜東風
襤褸の字を句集に学ぶ花曇
見るものをすべて花だと思いけり
鳥風は郷のほうより渡りけり
鳥雲を突き抜くほどの羽あらば
鳥曇いつも通りの誕生日
魚断ちの鼻をくすぐる山葵の香
魚断ちは山葵醤油で飯を食ひ
清明の太陽まるで元気玉
春眠し因数分解は呪文
春眠や助手席であと5分待つ
春光は車椅子を担ぐ子らへ
里の家春日影へと子ら放つ
句集一冊百の言葉知る春
桜東風すこし黄色の混じりをり
春昼のミンチ牛丼なお旨き
初雷は怖くもありて嬉しくも
虫出しの雷外出の許可下りず
貝寄風に会いに電動車椅子
糸遊や罪無き兵がまた天へ
新版の教科書重く雪柳
星屑が枝に積もりて雪柳
春の川小豆洗いも起き出して
木蓮に抱かれ一夜眠りたい
揚雲雀天守閣から見るお江戸
母校跡子供ら捜し雲雀来ぬ
初花や上司の点てた茶の旨き
一輪に万の価値あり初桜
初桜標本木のそばにあり
グラウンド残雪を掻くサポーター
窓際の椅子一脚に春コート
ドローンに素顔見せたる紫雲英かな
紫雲英田を心に留めて街へ出る
モーニングコーヒー飲めば雉子の声
春星や土俵下りれば父の顔
燕来る規制解除の大都会
燕来て居間より車庫が賑やかに
中日やまだ拝めてぬ祖母の墓
春分も独り身の夜の長きかな
春眠の母を助ける朝メニュー
日を追ふて春山の裾車列伸ぶ
芽柳や老舗の家具屋繁盛す
鶴帰る青と黄色の灯を見つつ
句を求め兼題求め春の夜
人形屋背中寂しく雛納め
本当に河童はいるか蘆の角
太陽へはつらつと伸ぶ蘆の角
青き眼の庭師と語る接穂かな
九ちゃんの歌で打ち消す春愁ひ
春の愁あの日にまた迷いけり
春禽や空に似合わぬ戦闘機
ニュースから目を伏せ庭に春の鳥
暖かや友の葬儀の帰り道
風船もフードコートの列で待ち
触れ太鼓響く浪速に地虫出づ
閉校す校舎に響く卒業歌
春濤は船幽霊の叫びなり
少年の目にどう映る春怒濤
一寸の命逃して根分けかな
受験子へ祖母のサービスオムライス
芽吹く木に今日と昨日の違い見る
如月や新体制の生徒会
宅配を使わず東風と来たる母
暮遅し厨は未だ静かなり
春暖に誘われ君を誘いけり
矩随の魂こもる涅槃像
槌の子も動き出すのか啓蟄に
啓蟄やテールランプの列長く
夜空へと紙風船の気球発つ
移ろう時代紙風船は不変
親になる娘迎えるひいなかな
雛祭着物で祝ふ子の少な
よなぼこり龍現れる前の空
沈む陽を磯巾着が丸呑みす
子の背に羽を付けたか春帽子
テレビから銃声春の雷近き
春北風とじゃれ合う犬と風の子と
あの人の残り香消えて夜の梅
まだ慣れぬ街の春水手に優し
春兆す雨の予報に弾む胸
鞦韆や空を見る子と地を見る吾
雉子啼くや不登校児に寄り添うて
安寧を願うかのごと雉子の声
春遅々や内玄関の車椅子
春遅々や解けぬ外出禁止令
防風を紡ぎ手に巻くおしゃれな子
防風や潮風走る母校跡
今日もまた演習音と百千鳥
百千鳥郷の訛りに聞こえけり
春光にあぶり出される吾の邪心
春耕や手が忘れてた柔らかさ
猫の恋厨房裏にドラマあり
猫の子の皿が増えたる軒の下
キャスターの本音がぽろりけふ雨水
水色の傘を卸せし雨水の日
雨水の日今朝は微糖のコーヒーを
山々が小さく見えて猟名残
まだ何も咲かぬ庭に春満月
春愁や好物食えぬ腹八分
春灯や郷の行事は無観客
去年より街に春の灯戻りきて
豆腐屋も木の芽田楽始めけり
海のもの山のものまで木の芽和
友達の意味知るバレンタインの日
凧持てば子供に返る親父かな
薄氷の包む新たな命かな
後輪に薄氷光る車椅子
春風にヤツの長所を見い出しぬ
蛤鍋を品川の海眺めつつ
料峭や朝まだ辛き角の部屋
観梅に愛犬も歩をゆるめけり
施設へと行く道々の梅見かな
ピザ焼く香末黒野の香にさも似たり
夕東風や君と下校す日もわずか
夕東風に夜勤モードへ切り替へて
春の雪しんしんと又りんりんと
東京に春の雪友いつ帰る
ウイルスがいると思えぬ春日かな
心地良き春日浴びたる車椅子
モーグルの中継観れば春寒し
故郷の名水知りぬ水菜かな
寒明やSkype越しの君眩し
寒戻る世界温める五輪の火
寒戻る庭の蕾も嘆き節
立春や昨日より手の温かき
立春を祝ふ言葉を探しをり
柊挿す邪気逃して身を浄め
福豆で疫病退治鬼退治
柊挿す家少なき令和の世
京の香を千枚漬に探しをり
千枚漬を食べつネットの京の旅
子育てを終えて寒肥ゆるり撒く
冬深む今日は下呂の入浴剤
冬深む五臓六腑に御味噌汁
寒梅に街灯ほどの光見る
寒梅に空の青さの二倍増し
ねんねこで吾を背負ったと今日も婆
魚断ちの吾を誘惑す鮃の目
寒鮃食ぶる背中に父の老ひ
我先に人を見たがる水仙ら
水仙や横一列にドレミファソ
外を向く新し靴と春を待つ
榾の火や明日の旅路を地図に見る
蕪村忌や絵を描けぬ手で投句せし
鍋焼きや震うは湯気か売り声か
越す先は隼の舞ふ海の街
旅立ちを送り送られ寒き影
爆笑の輪に広がりぬ咳かすか
大寒の言葉一つに温みあり
大寒やコーンスープ派お汁粉派
愛おしき粕汁に頬染める人
寒灯に揺れる数式丸暗記
遠火事や一番星が落ちた町
寒月や実技試験の時迫る
牡蠣飯を食えば車窓の海香る
寒餅ややっと揃った友の顔
ふと見せる猟犬の子の鋭き眼
不機嫌な天狗の仕業空っ風
命より心奪いて雪女
冬北斗パソコン越しの家族かな
夢叶い冬北斗にも願ほどき
背に枯野そこはかつての不夜の街
愛犬は凍てつく碗を気にもせず
客間から新年会の笑ひ声
七日粥流行病も祓えぬか
中継に気分味わう松の内
病床の友が気になる寒の入り
小寒の夜に読み聞かす笠地蔵
ニュース読む馴染みの声も四日から
ゴミ箱の歯ブラシにふと初昔
古巣へと帰る今年に弾む胸
後厄の今年の無事を願ひけり
ルーティンを崩さず祝ふ今朝の春
コーヒーを飲みつ待ちたる初日の出
年番の酌み交わす酒年守る
日記果つ帰郷の文字のないままに
冒頭の夢は叶ひて日記果つ
年準備祖母のリーダーシップかな
冬凪をながめ散歩す親子蟹
煤逃げを今年最後の罪として
葱汁に躯清める朝餉かな
葱汁や弾丸のごと喉を刺し
好物と知る人の盛る根深汁
カレンダー2つ重ねて年の暮
会いたくも会えないままに年暮るる
薬屋は風の神様信じをり
風邪薬覚悟決めたる子の勇み
底冷えにパソコンさえもフリーズす
底冷えの今朝も湯が出ぬ洗面所
スランプも昨日で終わり冬至来ぬ
食卓にんの字数えて冬至かな
テレビには冨士の笠雲吉報来
弟の誕生日祝ふ一茶忌
一茶忌や雲間より漏る陽のやさし
短日をケーキ屋さんへ急ぎけり
我よりも若き人の訃暮れの黙
ずれ落ちる冬帽子から覗く街
君編みし捨てれぬままの冬帽子
畳替仏間客間の二室だけ
畳替終えし仏間のりん響く
愛犬の脚に馴染ます初氷
初氷見せに来る子の手に溶けて
懐かしき声に振り向く年の市
年の市第九流れて足早に
年の瀬も人の噂は悪しきもの
極月の甘き思い出みな君と
極月やプレゼント選る難しさ
炉話や出稼ぎの父明日帰る
冬潮に四十二両の革財布
レコードのB面に合う冬の潮
鐘の音に冬潮さえも静まりて
玉子酒作る女の秘める過去
板チョコを掘り出す子らの寒暮かな
冬夕焼隣の君の眼鏡越し
ボーナスやファミコン買うてもらえた日
自衛隊の銃声す開戦日
祖母逝いて祖父が気になる開戦日
大雪や今年の漢字選びをり
初めての酢牡蠣に笑顔山育ち
面接日冬曙に背を押され
枯園に半年先を見てる母
パーティーの音が漏れてる冬の庭
都鳥我には遠い江戸の街
青春を過ごした街へ百合鴎
紅葉散る儚き万有引力
厚着して準備万端里帰り
枚数を競い合うたる厚着かな
鯛焼きを求むる列のたこ焼き屋
花八手無人の駅に誰を待つ
花八手知らぬ北の地夢に見る
押しくら饅頭阻むアクリル板
猿は湯で今日も押しくら饅頭す
チャイムが解く人の輪暖房寂し
郷の名を冠す白菜町おこし
高騰の冬菜客とのにらめつこ
膝掛を肩にも掛ける猫背かな
膝掛にさえ震災の夜の記憶
初雪や今日はブラックフライデー
咳くたびに常食遠くなりにけり
咳一つすべてリセットするがごと
三島忌やホットケーキを食ぶ平和
憂国忌死と向き合うてまた生きて
引っ越しは前途洋々小六月
青春の形は楕円ラグビー部
胸板の厚き介護士元ラガー
荒れる海大人げないと山眠る
小雪やタイヤ準備し娘待つ
降る星を大樹纏ひて冬うらら
月食の海に弧を描く鮫の群れ
家焼肉食べつ冬の街馳せつ
霜除けを見下ろす天も日食す
実家から離るるほどに冬ざるる
北風や君を案じて手紙書く
北風にふらり立ち寄るたこやき屋
火吹竹膨らむ頬のあどけなさ
千歳飴持てば私もおねえさん
芝浜の聴き初め早き霜月や
冬めくや介護止めたる静電気
発疹に魚断ちして冬に入る
吾の寸法で君は誰に毛糸編む
干菜見て食品ロスを反省す
蒲団干す人に感謝し夢に落つ
浮寝鳥群れに疲れた一羽かな
浮寝鳥今日のお宿は琵琶湖かな
ちり鍋や具を見分けれぬ刻み食
ちり鍋や新婚さんの笑ひ声
聞き役に徹して食ぶるうるめかな
小説の打つ指速き小春かな
小春日や無垢な瞳に一目惚れ
小春日や乾杯の曲弟に
鯛焼きに街の賑わい思い出し
加湿器の湯気も吉夢か天高く
立冬や響く防災アナウンス
行く秋や一つ悩みの置土産
遅くなる体内時計秋の果
朽ちるなら凛と朽ちろと破れ芭蕉
先人が見たあやかしは破れ芭蕉
賑やかに町の神社の冬支度
冬支度終えたる部屋の薄暗さ
文化の日誰が描いたか妖怪画
落語ある国に生まれし文化の日
五時起きの電車通学露寒し
コーヒーの空き缶並び露寒し
野の色はピカソの霊の仕業なり
施設にて観れぬ野の色人に聞く
晩秋や長き喧嘩に幕下りぬ
ミニトトロ背負う袋の木の実漏る
リハビリや今日は木の実をつまみけり
海螺打を体験したる令和の子
都来て夢中になりし海螺廻し
白露や昨夜の涙ここ落つ
白露やお悔やみ欄に恩師の名
秋金魚NOを表す宙返り
知る真秘密厳守の秋金魚
ご飯よりパン派になりぬ秋金魚
ため息で邪気を逃して秋深し
同じ木の栗鍋に入るまでの友
美術展あとに駅前かつ丼屋
色覚に正解は無し美術展
筆のごと空に落書きする芒
笑い茸欲しい夜の十や二十
笑い茸混沌の世を見渡して
笑い茸食らったような遠き日々
霜降や並ぶ画材の新しき
霜降や無言の君はハイネック
霜降や半年ぶりの缶しるこ
君はまた夢に残りて朝寒し
うそ寒や今は母の手吾が包む
かりんの実トイレに一つ置かれをり
甘き香に揺れる本能かりんの実
秋の月じわりと沁みるT-BOLAN
父と祖父差しつ差されつ秋収
帰郷できず一年また冬隣る
噺聴き食べたくなるは走り蕎麦
新蕎麦や七十五日寿命延ぶ
頭に葉乗せぬも雀蛤に
雀蛤となりその気持ち知る
雀蛤となれど君は君
身も心も財布までも宵寒し
干し柿と旧家の記憶ゆらゆらと
二階からお向こう見れば柿たわわ
色鳥や江戸の名所はもう観たか
黄帽子の列が見つけた小さき秋
片恋に進展あるか芋煮会
大鍋を持って持って横断芋煮会
一軒家刈田華やぐ笑ひ声
郷恋し見えぬ刈田を窓に見る
ネット見て木瓜の実煮たる若夫婦
葉の穴に命繋いだ菜虫見る
お日様をスパイスとする菜虫かな
古酒を酌する人の腰低き
古酒を飲み干すまでは開けぬ瓶
晩秋に小三治というジャンル消ゆ
秋寒しフェスの出番は十七時
色変へぬ松だけ残り母校閉ず
寒露来て犬のお手入れ換毛期
新米を配るるうちに日も暮れて
秋刀魚焼くその香でご飯一口目
おにぎりで贅沢気分秋の空
終わらない旅を託して星流る
空腹を強める音の秋の水
水の秋浮かんでくるは古代都市
文化祭準備着々宵闇や
宵闇に「わたしきれい?」と背中越し
障子貼る男児三人また破る
サツマイモ掘る子らの指恵み知る
賑わい取り戻す街蛇穴に入る
冷ゆる午後前日よりも熱きお茶
天高し消去法から残るもの
天高し幽体離脱できそうな
哀れ蚊の希望となれよ部屋の灯よ
大店の奉公人や猿茸
立ち止まり振り向くもあり猿茸
秋澄むや数千曲をポケットに
曼珠沙華人は福にも鬼にでも
得意気に母が出したるラフランス
膝上に梨の小山や車椅子
雨上がり雫美し千草かな
石榴割るまるで地球の断片図
病み上がり気付けば秋も深まりぬ
蟋蟀の唄にギターのコード変え
あの夢の続き描けばちちろ鳴く
秋分のペンが止まらぬラブレター
秋分や湖上の鳥居空に映え
鱗雲じゅげむじゅげむと子の散歩
体ごと吸い上げそうな名月や
十五夜に届く画像に窓を見ん
秋簾瀧の音響く茶屋の前
亡き祖母を思い出す香や糸瓜水
湯を弾く乙女の髪や黒蒲萄
なべっこや陽を浴ぶ熱き黒蒲萄
道曲がり稲掛見えて郷近し
蜂窩織炎熱下げる虫時雨
母の目に昔を映す秋祭
小鳥来る文化祭の立て看板
灯の親し章の終わりはあと少し
台風や騒がしいのは周りだけ
コスモスに足を止める人でいたい
対を成すカラス浮き立つ花野かな
スプレーで絵の具弾かせ花野描く
今日食す全てに感謝する厄日
鰯引くオープニングは漁村から
鰯引く爆売れ中のレシピ本
鰯引く料理はすでに始まりぬ
秋茜してはいけない恋をした
ずっしりと南瓜の重み陽の重み
秋うららケーキある卓笑顔あり
平凡と書いてしあわせ白露の日
鳳仙花吾を打ち抜いた紅い弾
爪紅や根岸の里のお嬢さん
虫時雨緒戦は我もその一味
秋灯や明日の釣果に期待して
秋の灯に頑張りすぎる人案ず
秋口に急に可愛くなった人
外出の許可下りぬまま扇置く
八つぁんの声に変わって扇置く
虫時雨聴いて反省今日の我
秋風と戯ることも罪なのか
秋風にページめくれる愛読書
秋風や曲のアレンジ変更す
白桃は汁の湖上を滑りをり
猫すらも寄らぬ吾の膝とんぼ来る
福島の街を案じて桃食いぬ
寒蝉や九九をつぶやく二年生
鈴虫と十を数える湯船かな
故郷の空は遠き二百十日
犬蓼や断捨離するも勇気いる
鈴虫の声して画像検索す
朝顔やハンコとなりて風に押す
吾も母も同じ好物夜食とす
早起きしコーヒー飲めば虫の声
涼新た星座神話の本買うて
秋の風斬る三輪の車椅子
四つ這いの子を先導すばったの子
蓑虫も雨に打たれて瀧行す
蓑虫の巧妙に練る野望かな
エアコンの部屋から逃げる処暑の夕
枝豆や祖父の手のしわ懐かしき
返信が来るまで長い秋の日や
面倒な日々に吹きたる秋の風
酔芙蓉見て受け入れる身の変化
新涼やコロナ禍の先光あり
秋の夜の空に開きし二尺玉
景ほどに音を感ずる秋散歩
あの人と会うと断言七夕や
盆に来る兵の御魂は何思う
秋北斗夢へと一歩近付きて
帰れないこと詫びる祖母の初盆
盆踊り櫓を囲む重力波
盆踊り無くとも先祖迎え入れ
蜩が一席喋る圓朝忌
秋の昼胸の空きたる打球音
流星や祖母は着いたか黄泉の国
流れ星何をそんなに生き急ぐ
山葡萄発酵の痕土器にあり
秋蝉は生きる生きろと熱唱す
立秋や日記書いて十七年
立秋や土曜の朝の静けさよ
白昼や羽黒蜻蛉の身のこなし
秋近し目覚めてすぐの虫の歌
君といた夢は異世界夏未明
向日葵や立ち合いは真っ向勝負
あの夏に戻すイントロの一音
散髪す慣れた母の手庭涼し
夏惜しむアコースティックギターの音
保育士を目指す乙女の白服や
向日葵や長は強くも柔らかく
熱き味噌汁冷房の毒を消す
蝉時雨小さく遠くなる古巣
全世界同じ祭に歓喜して
行間に本音を探す夏の恋
ハンカチは避難訓練後の出番
蝉歌う五輪で聴いた木遣り節
声涼しラジオ体操終えた子ら
夏草のコンクリートを退く力
地獄見た男綱獲る名古屋場所
ジグザグに日陰と日向車椅子
朝蝉や30度超え目に見えて
夏の夜の奇妙な声は他言せず
梅雨明けにステイホームの気も軽く
平成の曲も懐メロ夏の夜半
夏燕ブルーインパルスをコピー
大雨に当たりし祭り語り草
終わり行く休みを惜しむ夕蝉や
陰口を言う人の愚痴やめた夏
皆がまた揃うまで待つ夏座敷
初蝉や特別だった日の夕べ
鮎の引く力この手に残りけり
七夕に星を見上げた日は幾度
忍ぶ恋およしおよしと責める蝉
睡蓮や社交ダンス部勝ち進み
睡蓮や一寸法師見送りて
窓を見て環境委員喜雨を待つ
風鈴の短冊にさえ願い事
食えぬとも皿を彩るトマト盛る
地上でも再会ありぬ七夕や
夏山にソーラーパネル密となり
恵みにも害にもなりぬ夏の雨
夏雨や人の心も透けて見え
青葉闇墓地を横切り公園へ
下戸の吾と上戸の父と冷奴
完璧になれぬも目指す半夏生
忘れ得ぬ夏をなぞってTUBE聴く
デパートに下駄の音響く夏の午後
風鈴や空いた小腹に冷やし蕎麦
片恋や見慣れぬ柄の初浴衣
スタッフの浴衣も雅落語会
行きの道浴衣の列にわくわくす
浴衣着の君とデートす青写真
今朝の空誠の青や夏木立
暑き日に腰の爆弾作動せし
煮麺で始まる恋も梅雨寒や
水やりでできた小池に夏の蝶
梅雨寒や叶いかけてた恋逃げて
夏噺聴けば窓から江戸の風
暑き日のおやつ熱きお好み焼き
音は弾丸ギター掻きむしる夏
大谷が打てば啼きたる燕の子
ポジションはスイーツ席よ心太
夏至の候主語が「周り」に変わりけり
吐き出せず飲み込む言葉多き夏
燕の子誰が最初に吾を起こす
夏天指す嫌いな人の仕草かな
夏フェスの密に次ぐ密懐かしき
一列の子供らの声夏天衝く
梅雨空の玩具となりて吾の体
ステイホーム夏空と我慢比べ
夏燕生活音になりにけり
田んぼのケセランパセラン蛍舞う
ベランダの観葉樹カマキリ生まる
パフェの塔擬宝珠の如くサクランボ
人の世を殻から覗く蝸牛
夏野菜ぶっこむ二日目のカレー
軽トラの荷台でランチ田植の日
新品種期待膨らむ田植かな
夏空やラジオ体操第2まで
家の中苺吊して子が摘んで
旬過ぎてなお箸進む夏蕨
妖艶な空気満つる紫陽花寺
潮風が招く先の紫陽花寺
亡き友の誕生日来て六月や
夏雲をつまんだようなチョークの粉
水やりは完了したと朝虹や
サイダーの瓶並ぶ家水どころ
縄文遺跡群抜ける若葉風
ゲームから勝負のUNOへ夏の夕
夏と君それから僕のすれ違い
アイポッド2曲逃して昼寝かな
運転す母の腕巻くレースかな
夏服を肩までまくる君にキュン
小満の雨さえはじく草木かな
夏の夕星座盤手に待ち合わせ
故郷の老舗食堂キャベツ盛り
吾の歌に蛇さえ逃げて野に一人
緑風がパソコン前の吾を誘い
草刈の香り好んで深呼吸
草刈の音を枕に昼寝かな
金曜日卯月曇にほっとする
夏の夜の野に吹く風もまた旨し
夏場所の中継観終えなお無灯
夏蝶や和菓子作りに挑む午後
薬より頭痛和らぐ初夏の空
灯籠にワンポイントの牡丹の絵
スカイプで元気分け合う母の日や
ドリブルに君の髪揺れ光る汗
恋だとは言えないままに夏が来ぬ
寄席配信若葉色の着物映え
窓下をトラック神輿威勢なく
先生が見つけた卵蝿が孵化
悠然と蛾に立ち向かう君にキュン
迷い蟻光追いかけポッケ出る
巨人居ぬ街を探して旅の蟻
鯉のぼり上がらぬ裏に少子化か
亡き友を浮かべる空に鯉のぼり
故郷の湧水走る春の風
懐かしき黄金週間の帰郷
車椅子押しつ押されつ青き踏む
メーデーや家事に勤しむ古希の母
しゃぼん玉レトロ楽しむ昭和の日
ソバージュの君を思わす柳かな
春風に倒されそうなジェンガかな
花冷えの今朝も感謝の御味御付
炬燵塞ぎ猫は庭でまた丸く
桜時クロスワードを一つ解き
行く春や洗濯物はもう乾き
教えて学ぶ二年目の晩春や
春昼にピザ焼く人の手際良さ
春の庭見知らぬ鳥がパトロール
花自慢和気あいあいと国自慢
「かわいい」に路線変更チューリップ
夢うつつ二度寝を止めた初音かな
特売のチラシ持つ手に降る穀雨
良いことは二つはないと春時雨
しらふでも桜餅手に酒トーク
花筏ピンクの空と呼ぶ魚
昼寝場の東屋蜂に追い出され
友好の花笑うホワイトハウス
花の下母の力作デカプリン
春暑し近くて遠い我が家かな
唐揚げと食用花菜空の下
大皿と喧嘩をしない桜漬
背に視線振り向く先に桜あり
一面の花菜に我が身とらわれて
裏道を知る人そこの花も知る
花人は宴もせずに流れ行く
テレビ体操春空のV字列
春の雪発車できない送迎車
白帽子花はかぶるも月は出ず
残る鴨反発心で吾も残る
たんぽぽの綿毛に乗りて祖母空へ
春夕焼密かなデート見守りて
清明や北の国から悼む声
初恋は入学式の一目惚れ
花曇り出した答えに案の文字
花は木を選ばずそこに凛と咲く
花疲れコロナ疲れと名を変えて
若駒や四十路で句作始める吾
陸奥の古都を探訪桜餅
桜餅リズムで作り六つ七つ
海の宿醤油にもがく海栗を食べ
今日挙げた手柄は桜明日は無し
密を避け古典落語でエア花見
君と観た映画を独り朧夜や
日曜日母はせっせと蕨採り
懐かしき祖母が叩いた初蕨
燕来る巣の真下には自動ドア
一目惚れ多発の卯月要注意
名峰も街もセピアに黄砂来ぬ
昨日まで無かったはずの春の恋
仲春もコーンスープは腹に染む
恋よりも体の悩み増える春
引鳥の声を合図に吹っ切れる
雪解や黒が挽回オセロかな
春風や大名跡の寄席幟
春分におはぎ出す粋な給食
春分に大地を揺らすメッセージ
隣人の口笛軽き春が来た
真向こうの家に春光降り注ぎ
きりがない討論に春風笑う
春朝のカフェオレ甘し今日の分
歯車の狂い出す音や落椿
春時雨ぽつりぽつりとジンマシン
引鶴や2年もたないスマホかな
いつかまた浪速に戻れ春場所や
あの人も四十路過ぎたと気付く春
春愁や帰らぬ人のアカウント
春夕焼鍛冶屋が鉄を水に差し
卒業前夜胃に落ちた「好き」の2字
春愁や浪江に残る牛の声
「生きてる」で始まるブログ春愁う
土現る地窓に笑顔こぼるる
また誰か初恋を知る春が来ぬ
春江や粥と麻婆流し込む
終雪や自粛自粛の人の念
震う肩春一番のせいにして
受験後に手に持つ本はコミックス
休日の手料理はにんにくほのか
春空に三日月溶けた六時半
気が付けば家々の屋根見えて春
「PM2.5感知」も春の声
耳の日に初音聞きたく散歩する
春の夜街に灯も無く影も無く
雛よりも先に仕丁と目が合うて
三密も三段雛は気にもせず
いつまでも箱入り娘ケース雛
二つ目へ羽織うれしや春の寄席
春昼に婆の鼻歌美智也かな
二月尽異動の噂立ち始め
早春や葉書に躍る中止の字
春暁に烏は何を討論す
春の雲他人は変わらぬ変えられぬ
缶しるこ自販から消え春が来ぬ
ボイラーの湯気とじゃれ合う春の雪
春天へ加湿の湯気は龍のごと
春寒し大判焼きにかぶり付き
せっかちに咲かぬうちから春噺
コロナワクチン人類に春告げよ
紙製の鶯手から飛びそうな
早春のご馳走はまだ風呂のお湯
強風に思わず嘆くこれも春
窓たたき寝坊するよと春の雹
猫の恋義理の2文字は辞書に無し
バレンタインデー古希の母からチョコ
春夜の地震アラームにリフレイン
建国記念の日蕎麦に見る歴史
旧正の行事無き郷何思う
春の雪白さ突き刺し偏頭痛
白帽子脱いでかぶって春の家
あの日々へ誘(いざな)う曲と春の雪
春雷か世の代弁かうっせえわ
LINEで恋待ち遠しき春夜かな
春の雨窓打つ音の子守唄
春の昼フローリングに影伸びて
春の雪名を変えてなお凄まじき
公転に寒明けさえも早くなり
粗忽の立春一日早く来ぬ
黒い羽根雪に交じりて空に舞う
豆撒きや孫が撒く豆婆ひろう
横綱も笑顔が似合う節分会
三寒四温長くなるうたた寝や
暑がりも背中震わす寒き朝
寒晴れに昼飯の当て探す猫
文通の手紙の束や冬五巡
寒晴れや天窓の下笑う影
エアコンの電源切って春隣
文字通り背中に走る大寒や
吹雪でもデイサービスに無事揃う
初場所やひいき力士と験担ぎ
強震も火事も忘れぬ忘れ得ぬ
懐かしい声も笑顔はマスク越し
掛け声に臼を飛び出る寒餅や
お湯が出ぬ水道憎し冬の朝
空ボトルカラフルにして梵天に
冬の朝屋根も地面も同じ色
初場所や郷土力士の勝負時
雪寄せの父案ず母LINEに見
懐かしきひと月前の雪の黙
我望む雪寄せ版の掃除ロボ
雪寄せの労をねぎらう缶しるこ
美しい雪はひと月あとは邪魔
七草やメインの粥は小皿盛り
枝の雪空に染まりて雲に見え
綿雪かボディーソープがふわり舞う
寒鴉床出る勇気我にくれ
帰省せず食べる芹鍋郷の味
大雪語りけり海の温暖化
初芝居団十郎は空きのまま
元日や日の出見えぬも手を合わす
マイブログ更新納め日記果つ
時早し角が折れたる暦果つ
芝浜が沁みた心に除夜の鐘
鰰で一年締める我が家かな
早替えの師走始めのカレンダー
聞こえくるあの音は鈴か除雪車か
窓の灯やステイホームのクリスマス
寒空に飛び立つ老爺いざ行かん
赤鼻のヘッドライトに雪の影
肩に雪手には君へのプレゼント
亡き友もたしかにここに古日記
聖者の行進屋根上雪走る
漫才で冬嶺登る若手かな
震う笛窓下通る焼芋屋
窓に雪背にはしずく露天気分
野良猫のねぐらを案ず雪見かな
ストーブを囲みし記憶地震の夜
一晩で見事に見頃雪の華
暮れの候会えぬ家族にギフトかな
冬晴れやステイホームの気に障る
朝寝坊冬曙にだまされて
冬の朝窓の向こうに灯がひとつ
寒し日の朝刊で知る勇む友
海荒れろ眠る鰰呼び起こせ
片恋もあれば少しは冬ぬくし
増えていく髪を切る人暮れの景
暮れに切る床に落つ髪厄も落つ
今は見ぬ雪ん子やはり妖怪か
古日記ワードに打つ手止まりけり
無造作にスマホ置かれし古日記
要請も無視をして熊街に出る
あの夢を他言するなよ冬の月
冬に合うラーメンの香味は醤油
鰰の初漁の報山で聞く
初雪を喜ぶ声が今夜の灯
冬晴れの新天地不安競り勝つ
コロナ禍を右往左往で師走来ぬ
句を詠みていいね気にする吾は寒し
寒暁に穿く母からの裏起毛
テレビから伝う五感鰤の刺身
厨房は時知らず冬鯖うまし
足跡と車椅子跡雪道に
着ぶくれの自販入れ替え街ぬくむ
パソコンも起き上がられぬ寒き朝
冬便り人伝に聞く君は母
形替え令和に栄え冬祭り
窓開けて土は見えるも冬香る
いと甘し熱い葱汁ジュースかな
ウインナーを論ずおでんバイキング
手にふわり雪の触感ノズルから
寒き朝昨日のブログいいね無し
冬晴れの不意打つ笑顔卑怯かな
雪告げるアナの笑顔は晴れマーク
冬北斗いつか戻らん北の杜
思い馳せ見上げる空に冬北斗
人形屋袴着の子に嫉妬する
銀世界雪ん子からのプレゼント
冬夕焼重なる影も手は触れず
冬夕焼15時半の孤独かな
テレビでは犬が納豆また我も
霜月の山の落書きピカソ作
あられ打つ耳から伝寒さかな
錆び付いたフットレストの大根抜く
クラスの窓辺大人びた雪女
初雪やスパイク痕を子が残し
子が言うにあれに浮かぶはくじらぐも
窓打つあられ雨よりもロック調
寒き朝茶柱のごと当たり缶
踏む落ち葉昨日見上げた奇麗な葉
後輪に落ち葉つけたる車椅子
立冬に逆らうように抹茶MOW
立冬に髪染めし木々凜と立つ
コロナ禍を部屋で過ごすも街は秋
疫病退散秋空に大輪
秋味のビール呑む人恵比寿顔
秋暁にまだ居る月と目が合うて
気嵐ニュースに部屋も寒くなり
女子二人誰(た)を噂する秋の暮れ
秋暁や歌の精進誓ひけり
とろろ食ふ涼しくなった朝の卓
ちぎり絵の秋の山水味深し
贅沢に梨を丸ごとすり下ろし
秋噺外へ出ずとも気は清か
今宵だけ南瓜とゾンビよく似合う
ひつまぶし錦糸卵はイチョウかな
スマホは句帳左手で秋を詠む
不退転あやかりたいや赤蜻蛉
晩秋に相撲列車が江戸を発つ
豚汁と炊き込みご飯秋の膳
下魚(げうお)から脱して出世秋刀魚不漁
白龍か焼き芋の煙(けむ)天昇る
新聞に包まれし芋秋を告ぐ
贅沢は朝の筋子と新米と
星座盤片手に友と秋の夜